志太榛原地域支部

指標で見る明治大学(その3)

指標で見る明治大学3/3

 これまでの改革が志願者数日本一など一定の成果をもたらした明治大学だが、今後、大学間競争はさらに激しさを増すことは確実だ。 福宮賢一学長(66)と、大学の意思決定に関わる評議員を務める向井真一氏・内田洋行相談役(65)に、現状認識や今後取り組むべき課題などを聞いた。

ー脱・2番手へ研究強化ー

明治大学学長 福宮賢一氏

-志願者数の増加など最近の躍進はめざましい。

 「なんらかの数字を目標としてきたわけではないが、キャンパス整備や入試制度改革など地道な努力の積み重ねが効いているようだ。 高校生からの高い評価はうれしい」。

-目指す大学のイメージは。

 「世界のトップ大学だ。 グローバル社会で自分のカで考え判断できる人材を育てたい。 国際化、研究力、社会貢献の強化という三つを柱に進めていく。 国際化は『グローバル30*1』選出を契機にかなり進展した。 研究面では、先端研究から新しく総合数理学部が生まれたように、有望なシーズをさらに育てていく」。

image001-躍進の背景にはガバナンス改革が大きい。

 「重要な意思決定は、かっては全教員が集まる教授会を経ていた。 学部代表の教員が出席する代議員会制に改め、学部や研究科の新設などを柔軟にできるようになった」。

 「研究・知財戦略、国際連携、社会連携の各分野に『機構』と呼ぶ組織を設置し、学部の縦割りから離れて課題に取り組める体制ができた。 伝統的な学部の独立性の強さが切磋琢磨(せっさたくま)となり、改革の原動力となってきたが、弊害もある。方向性を決めることについてはリーダーシップを発揮していかなくてはいけない」。

-明大生の特性をどうみているか。

 「潜在的な力を持っているが高いところから人を見ない、ということではないか。 今でこそ明治大学が第1志望の学生は増えたが、大学受験で早稲田や慶応義塾に落ちて来るなど挫折経験のある人も多い。 負け知らずの人にはない、人の痛みを理解し相手を認める姿勢が底流にある。 企業から明るく親しみやすいと出身者が高く評価されるのも、そうした部分に根ざしているのだろう」。

-首都圏の総合私大での位置づけをどう考えるか。

 「早慶に次ぐ2番手グループとされているが、その枠に甘んじていてはいけない。 現状では、早慶などに比べると研究面でシーズをまとめたり、際立たせたりする力はまだ弱いと自覚しており、学ぶところはたくさんある。 追いつかなければならないが、相似形を目指すわけではなく、独自の個性を出していきたいと考えている」。

*1; グローバル30: 2008年に福田首相提唱した「留学生30万人計画」に基づき、文部科学省が国際化拠点大学を選び、重点的財政支援をする事業。 高等教育の国際力強化や国際的に活躍できる高度人材を育成するのが目的。 英語だけの授業学位取得できる態勢づくりをはじめ、専門スタッフによる留学生の生活支援や就職支援などを進める。

 留学生の受け入れ拠点となる大学を30程度選ぶが、今年度はまず7月に13大学を採択した。 各大学には年間2億~4億円が5年間継続して交付される。 採択された大学は次のとおり。東北大、筑波大、東京大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大、明治大、慶応大、上智大、早稲田大、同志社大、立命館大。


ー型にはまらない学生をー

内田洋行相談役 向井真一氏

-評議員や理事として明治大学の運営に関わる中で、現状をどうみるか。

 image002「戦略的に学部を増やし、施設も新しくした。 『攻めの経営』を続けている。 私が在学していたころは、学生運動が盛んで、当時はバンカラっぽさがあった。 今はずいぶん違う。 女子学生が非常に増え、明るいイメージになってきた。 競争が激しさを増す中、攻めるタイミングを逃していては成功はない。 現状維持でやっていては決してうまくいかず、小さくまとまる必要はない。

-明大生の個性をどうとらえているか。

 「ある人の言葉を借りれば、『知的開放型体育系』というイメージに近い。 明るくてスポーツ好き。 急に強くなろうとせず、こつこつと努力して物事を考える。 一人ひとりの違いを大事にする。 こうした個性の集団が明大だ。

-企業側から学生に望むことは。

 「現場で、臨機応変に動くための知恵が求められる時代になった。 あの山登れ、この道を通れと指示を出しても、途中で橋が壊れていた時にどう判断するか。 様々な体験をさせて、どうするかを考えさせる必要がある。 『転ばぬ先のつえ』というが、大事なのは転んだ後のつえ』。 どんどん転ばせたらいい」。

 「能力や知識を身につけることは当然だが、それだけではだめだ。 自分で考え、自分の道を切り開くこと。 大学は勉強の仕方を教える場所であって、その先は学生自ら考えるしかない。 大学側も学生に『こうあるべきだ』 『こう学べ』と型にはめてはいけない。 この大学で学びたい、と学生に選んでもらう。 そういう人材を集めるために大学側もどう個性を出すかが問われている」。

-大学経営と企業経営を比較して、どう感じているか。

 「企業は絶えず『伸びる事業』と『そうでない事業』とを、優先順位をつけて投資判断している。 大学では学部の統廃合といった議論はほとんどない。 撤退・進出を繰り返し、新しい組織を常につくり続けている企業のような発想が、大学にも必要だ。 教育カリキュラムの評価についても、数値化などの客観性が求められている」。

May 17 2013

日経産業新聞

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